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第7話(その10) 問題

キム次長: (にやりとして)そうだなあ…まずは…何を言うか忘れちまって。次は、悪いことをしてるから。後は、(にやり)…相手を好きだから。さあ、どれだ?

キム次長の得意とする三択問題です。彼のこの、事の本質をすばやく見抜き三択に整理する能力には舌を巻きます。ミニョンは、”先輩”の彼にこう呟いたのです。

言いたいことがあるのに…別の言葉が口から出てしまうのはどうしてでしょうね?

ミニョンの心を占めているのは、昨日の湖でのユジンとのやり取りです。彼は、春川に行ってユジンの今まで知らなかった多くのことを知りました。そして同時に、思った以上に自分がユジンに心を奪われていることにも気づいたことでしょう。彼女のことを知れば知るほど、加速度をつけてもっと彼女のことを知りたいと思う自分が居るのです。

三択問題の答えは決まっていました。次長が答えようとしないミニョンに、うまいとはいえないピアノを弾きながら、「その”誰か”ってチョン・ユジンだろ?」とつっこむと、ミニョンははぐらかして、次長のピアノの下手さをなじります。昔はもっとうまく弾けたとキム次長。

キム次長: その時はなんて言うか、その…愛の力で弾いたってことかな?
ミニョン: …誰かを心から愛する気持ちって…どんなものなんですか?
キム次長: 心から誰かを愛する気持ち…さびしくなるってことだろ

キム次長の言葉は、まさに今のミニョンにぴったりの言葉でした。以前、ミニョンはユジンに強い口調で言われました。…これまで誰かを心から愛したことなどないはずだ、と。だからそんな風に簡単に言えるのだ、と。自分が今ユジンに抱いている気持ちは、いったい何なのかを、ミニョンは計りかねています。ただ、昨日ユジンに言った言葉だけでは、自分の気持ちを言い尽くせていないことは確かでした。「さっきの答え…最後のやつだな?そうだろ?」

次長はピアノを弾くのをあきらめて帰り支度を始めます。ミニョンはやおらピアノの前に行くと、片手で何気なく弾き始めます。『初めて』のメロディです。やがてミニョンは両手で弾きだし、キム次長を驚かせます。「お前、ピアノ弾けないんじゃなかったのか?」

ミニョン: 先輩。僕ってもしかして天才?

ミニョンは自分でもびっくりします。

* *

サンヒョクが荷物を手に、二階から居間に下りてきます。スキー場での野外コンサートの下見に出かけるところです。チヨンは、そんな息子がユジンに振り回されているようで不満です。チヌがなだめます。「今回はサンヒョクが行って、次はお前の誕生日もあることだからユジンが来て…交互に行ったり来たりすればいい」

誕生日に呼ぶのも反対するチヨンを後に、サンヒョクは、ヨングクとチンスク、そして驚いたことにチェリンも引き連れてスキー場に向かいます。下見のついでに、スキーを皆で楽しもうという雰囲気でもありませんが、最近ユジンと電話で話してもいないサンヒョクは、友達と行くことでユジンとのわだかまりを軽くしたいと思ったのかもしれません。チェリンにも、一人でミニョンにスキー場に会いに行くのをためらわせるものがありました。

* *

ゴンドラ乗り場の前には、すでにユジンが待っていました。ちょっとぎこちないユジンに、ミニョンはいつものように笑いかけ、二人はゴンドラに乗り込みます。山頂のレストランの改装の件で、視察に行くのです。

ゴンドラに向かい合わせに座る、ミニョンとユジン。視線を窓の外に向けていようとするのだけれど、どうしてもミニョンの目は、前に座るユジンに引き寄せられてしまいます。すると、ユジンもそれを待っていたかのように反応し、二人は思わず目をそらせます。そしてまた、その繰り返し。微妙な笑みが二人の口元に浮かびます。こんな二人のやり取りは、高校時代の放送室でのユジンとチュンサンを思い出させます。

山頂のレストランを二人は回り打ち合わせをしています。壁面の色を今のアイボリーとブラウンとピンクから、オール・ホワイトにしたいとユジンが言うと、ミニョンはぴたりと足を止め、思い出したようにユジンに言います。

ミニョン: ああ、そうですよね…ユジンさんの好きな色は白でしたよね?
ユジン: …!
ミニョン: 好きな季節は冬で…好きな食べ物はなんですか?

ユジンはあの時、飲めないお酒に前後不覚になっていて、ユジン自身は覚えていないかもしれませんが、ミニョンに肩を担がれながら、自分が好きな色、季節をいい、あなたも同じに決まってるといったのでした。【第5話(その10) 初めて好きになった人

ユジン: (いぶかしげに)なぜそんなことを?
ミニョン: (にっこり笑って)ただ…覚えておこうと思って

そう言ってミニョンは先に行ってしまいます。ユジンは今のミニョンの言葉にどきりとします。それは、自分がチュンサンに言った言葉…。自分とチュンサンしか知りえない言葉…。ユジンは、奇妙な感覚を覚えながらも、単なる偶然だと思いなおします。二人は夕日が沈むまで、視察を続けます。

* *

チョンアの部屋のチャイムが鳴り、ドアを開けるとキム次長があわてた様子で立っています。山頂で強風が吹いて、ゴンドラがストップしているというのです。

* *

山頂にミニョンとユジンは二人だけ取り残されてしまいました。仕方なく、レストランの暖炉にミニョンが薪をくべ、火をおこします。心配そうにユジンは外を見ています。歩いて下りることはできないかとユジン。あわてずに待つのが賢明だとミニョン。それでも、ユジンが離れて窓の外ばかりを見ているのでミニョンが、「僕と一緒にいるのは気まずいですか?気まずくなければ、こっちに来て一緒に火にあたりませんか」と声をかけます。ユジンはあわてて、「私…もう一度、三階を見てきます」と、その場を立ち去ってしまいます。

* *

スキー場にサンヒョクたちが到着します。チョンアとキム次長の姿が見えました。

サンヒョク: (あたりを見回して)ところでユジンは?部屋ですか?
チョンア: (おそるおそる)いや、それがその…ちょっと問題があって…
サンヒョク: どんな問題?

チェリンがミニョンの居所をキム次長に尋ねます。キム次長も答えにくそうに、強風でゴンドラが止まり、二人が山頂に取り残されていることを説明します。サンヒョクとチェリンは驚いて、顔を見合わせます。

* *

三階からユジンが下りてきます。ミニョンは暖炉の前のいすに腰掛けたまま眠っています。ユジンは、そっとその横に座ります。
<第7話 冬の嵐 了>

オリジナル版とNHK版とでは、第7話の終わり方と第8話の始まり方が大きく異なります。それに関しては、次回第8話(その1)の最初に書きたいと思います。
それは…まさに”嵐”です。
by ulom | 2004-08-09 11:36 | 第7話 冬の嵐
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