チョンアもスンニョンもすっかりでき上がってしまい、ユジンを残してキム次長とともに帰ってしまいました。ミニョンは、酔うことができないのか、ひとり変わらず紫煙をくゆらせて、突っ伏したユジンを見ています。二人だけになったテーブルで、ユジンはまたグラスを空け、そして唐突に尋ねます。…一度犯した間違いを、いけないとわかっていても、また繰り返してしまうほうですか?
ユジンの心は、十年前のあの高校の焼却場へと戻っていました。チュンサンがユジンにした質問を、今ユジンはミニョンに投げかけます。 ミニョン: 失敗はしても、間違いは犯しません。ましてや同じ間違いは絶対にしません ユジン: そっか。じゃあ、ある人にもう会わないって心に決めたら、会いたくてもがまんしますか?それとも、また会いますか? ミニョン: (きっぱりと) 会わないですね。 あの日、ユジンはチュンサンに応えました。 ユジン: たぶん、私だったら、もう一度会おうとすると思う チュンサン: どうして? ユジン: 会いたいって気持ちに理由はないでしょ? チュンサンとの一つ一つのやり取りを、こんな風に全部覚えているユジン。いつも心のどこかに、チュンサンを追い求める気持ちを、がまんして隠しているユジン。今その秘密の扉を、ためらいがちに開き、ミニョンをそっと覗き見るユジンが、そこにはいました。けれども、そうしてチュンサンを求めれば求めるほど、ミニョンの応えはことごとくそれとは正反対に離れたものでした。 …なのに、どうしてこんなに似ているのかな ミニョンに初めて会ってから、ずっとユジンを悩ませつづけている問題。違う、この人はチュンサンじゃない、別の人だと頭ではわかっているのに、もしかしたら、万が一という思いも捨てきることのできないユジン。 しかし、ミニョンの方にはこのユジンのつぶやきに、思い当たるまったく別のものがありました。そう、チェリンの言葉…ユジン、ミニョンが誰かに似てるって話をするかもしれない。誰に?ユジンの初恋の人… ミニョン: (目をすがめて)誰にですか? ユジン: …私が初めて好きになった人です。初めて好きになった人…。初めて… その言葉のあまりの符合に、急速に酔いが醒めていくかのようなミニョン。一方ユジンはすっかり自分を失っていました。酩酊し、心の扉は開かれてしまいました。いま、チュンサンを追い求める気持ちの中で、ユジンは溺れてしまいそうでした。彼女の瞳に映るミニョンは、チュンサン、十年間ずっと忘れずにいる愛しいチュンサンにかわります。じっと見つめるユジンの潤んだ瞳に、ミニョンは冷たく言い放ちます。…もう出ましょう。 ひとりでは歩くこともできないくらい酔ったユジンに肩を貸しながら、何度も家を尋ねるミニョン。ユジンはそんなことはお構いなしに、間近に見るミニョンにチュンサンを重ねずにはいられません。ミニョンはそれどころではありませんが、この傍迷惑な出来事は、ミニョンの心にしっかりと焼き付けられ、後に思い出されることにもなります。 ユジン: 好きな色は…白、きっと白に決まってる。間違いないわ。好きな季節は…冬でしょ?私も冬がいちばん好き… チュンサンとの最後になってしまったデートの帰り途。街で鯛焼きを買って、仲良くふたり並んで歩いたあの日。一緒に応えようって言ったのに、ユジンばかりが質問するから、チュンサンが「何でユジンは答えないんだ?」と訊くと、ユジンは言ったのです。 ユジン: 覚えておこうと思って。チュンサンの好きなもの全部、覚えておきたいから… 第2話(その9) 白いキャンバス やむなくミニョンは、ユジンをおぶって自分のホテルの部屋まで運ぶほかありませんでした。やっとの思いでソファにユジンを寝かせ、息をついた後のシーンが、すこしカットされています。 部屋に戻り、ミニョンが眼鏡を外し、冷蔵庫から水を取りだし、ぐっと飲んで、フッと息をつきます。 寝室から毛布を持って、ソファに横たわるユジンにかけてあげます。ふたたび冷蔵庫から今度は缶ビールを取りだし飲むミニョン。ユジンがかすかに目を覚まし、そのぼんやりとした視界に、眼鏡をとったミニョン、チュンサンが浮かびます。思わず、チュンサン…と言葉にすると…。 何? 驚いてじっと見つめたままユジンがからだを起こします。 <第5話 了> 明日は、月に一度のごあいさつ、の予定です。
by ulom
| 2004-07-12 18:35
| 第5話 罠
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